韓国映画『パラサイト 半地下の家族』の最多受賞で見えてきた日本映画界の課題

最近、韓国映画が元気ですよね。『パラサイト 半地下の家族』が、カンヌ国際映画祭のパルム・ドール、アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞と最多4部門受賞という快挙を成し遂げました。この映画は、海外からは垣間見ることができない韓国ならではの格差社会を描き切っており、ユーモアを交えながら、その現状への疑問や怒り、不満を訴えています。
韓国映画にはほかにも、1980年代の激しい民主化運動や、北朝鮮への複雑な感情など、強いテーマが存在しています。以前、たまたま1980年に起こった光州事件が題材の『タクシー運転手 約束は海を越えて』と、1987年の韓国民主化闘争を描いた『1987、ある闘いの真実』を観ましたが、日本ではバブル時代に当たる頃に、お隣の韓国ではこんなにも過酷な現実があったのか、と驚いたものです。いや、これは日本では作れない映画だな、と感じたものでした。題材だけでなく、その熱量にも。
韓国は、熱しやすい国民性を持っていると言われています。それがときには他国との軋轢を生んだり、その押しの強さに嫌悪感を抱いたりと、ちょっと引いてしまうところでもあるのですが、民主化運動や映画製作に向かった際には、とてつもないエネルギーになります。そして、国を挙げての映画製作へのサポートも日本より充実している側面もあり、うらやまし気持ちになることもあります。
日本の映画は、一昔前よりは元気になってきたと感じています。ハリウッド映画に惨敗ばかりしていた時代を抜け、徐々に盛り返しつつあります。しかし、アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したカズ・ヒロ氏が、「(日本では)夢をかなえるのが難しい」とインタヴューで吐露したように、なにかがまた足りないし、なにかが過剰。ですから、多くのアーティストが「日本に生まれてよかった!」と言えるほど才能を発揮できるような環境を作っていくのが、今後の課題なのではないかと思います。それはもちろん、映画の世界だけにとどまらないことですが。